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ハワイの神話と伝説

『 ハワイの神話と伝説 』 目次  (タイトルをクリックすると各項へジャンプします。)
はじめに・・・(著者プロフィール・参考文献)
第一章 島々と人間の誕生
【1】 ハーロア(Haloa)
【2】 「メレ・ア・パークレイ(Mele A Paku'i)」より
【3】 四大神による創造神話
【4】 ペレ(Pele)による島々の創造
第二章 マーウイとヒナ
【1】 マーウイの誕生
【2】 マーウイ、島を釣る
【3】 マーウイ、空を持ち上げる
【4】 マーウイ、火の起こし方を知る
【5】 マーウイ、太陽を捕まえる
【6】 マーウイ、化けトカゲをやっつける

第一章 島々と人間の誕生
四大神による創造神話(1)
四大神による創造神話(2)
四大神による創造神話(3)
四大神による創造神話(4)
* イプ
……ひょうたん・夕顔。その果実。
* ニウ
……ココヤシ。
* ウル
……パンの木。
その実がパンのようだというのでこの名がつけられましたが、実際はパンというよりイモのような味です。ハヴァイイではタロに次ぐ主食でした。
* ウアラ
……サツマイモ。
* マイア
……バナナ。
* カーネ・フリ・ホヌア
……「大地が変わった男」の意。
「カーネ」は、創造の神の名前であるほか、「男」「夫」という意味もあります。
* アヴァ
…… コショウ科の木の一つ。英語ではカヴァ(kava)といいますが、それはほかのポリネシア圏から入った言葉です。アヴァには神経を麻痺させる作用があり、その根から作った飲み物は、神様へのもっとも重要な供え物と考えられていました。
* ケ・アカ・フリ・ラニ
…… 「ケ」は冠詞。 「ケ・アカ」は「影」。 全体では「天が変えた影」の意。

【 解 説 】

ハヴァイイの、主要四神による世界創造の神話はいくつかありますが、これは代表的なもので、オアフ島の伝説です。ほかのバリエーションも、細部は異なりますが、カーネが偉大な創造者であり、クーとロノはその協力者であること、カーネを中心とするこの三神が、カーネの姿に似せて土から人間の男を作り、その伴侶として女を作ったことなどは共通しています。


ここでご紹介したオアフ島の伝説では、カーネは赤土から人を作ったことになっていますが、これはハヴァイイ人の肌が赤みがかっているために考えられたことでしょう。


この物語の初めの方の、カーネがひょうたんから世界を作ったという部分については、独立の物語として語られることもよくあります。また、その場合、創造主をカーネではなく、天の父なるワーケアとする伝承もあります。


カーネ、クー、ロノと、ちょっと異質なカナロアは、ハヴァイイ神話の中で早い時代に現れたとされ、特に高い地位を占める偉大な神々です。その中でも、創造の神であるカーネが最高位の神と考えられます。ハヴァイイはポリネシアに属し、その神話はポリネシアのほかの地域の神話と多くの共通性があります。カーネ、カナロア、クー、ロノは、似たような名前でポリネシア各地で語られる重要な神です。しかし、このお話では、四大神の中で、大洋の神カナロアだけがなんだか情けなく感じられます。


カナロアは、もともとポリネシア全域で重視されてきた神で、例えばハヴァイイとの関わりが深いタヒチ周辺では、カナロアに当る神はタアロア(Ta'aroa)と呼ばれ、もっとも重要な神、万物創造の主ということになっています。それがハヴァイイでは、カナロアはカーネと混同されることもあり、比較的影が薄いばかりか、暗黒界の神、黒魔術の神ということになってしまいました。この創造神話の後日談として、人の創造に失敗したカナロアは、悔し紛れに、地上に有毒物質など人が死ぬあらゆる原因を作り、人を死して土に還るべき存在とした、ということも言われます。


四大神が人類を創造したという物語はほかにもいろいろあり、最初の人間の名前も、ここでご紹介した「カーネ・フリ・ホヌア」と「ケ・アカ・フリ・ラニ」のほか、たくさん伝わっています。その中に、こんな伝承もあります。

神は、最初の人間として、土から *クムホヌア(Kumuhonua) を作りました。そして、クムホヌアの体の一部から *ラロホヌア(Lalohonua) を作り、妻として与えました。二人は、カーネの聖なる地で幸せに暮らしていました。けれどもある日、*海鳥 にそそのかされたラロホヌアが、カーネの聖なる果実を食べ、続いてクムホヌアもその果実を食べてしまいました。二人はその鳥の導きで、カーネの庭からジャングルへ出て行きました。そのとき、木々は二手に分かれて道を作りましたが、二人が通りすぎると元の位置に戻りました。そうして、カーネの聖なる地への帰り道は永遠に失われたのです。カーネの定めた掟に従わなかったラロホヌアは、気が狂い、海鳥にされてしまいました。また、クムホヌアには、死すべき運命が与えられました。

クムホヌアの名前の意味
 クム(kumu...始まり。)
※「クム・フラ」という言葉で知られるように、クムには「先生」という意味もあるほか、
「基礎」「原因」などの意味もあります。
 ホヌア(honua...大地。)
ラロホヌアの名前の意味
 ラロ(lalo...下。)
 ホヌア(honua...大地。)
海 鳥
ラロホヌアをそそのかした海鳥の名前は諸説あり、それぞれ名前の意味も違っています。
姿はどうやらカツオドリだったらしいのですが、伝説上の怪鳥と考えた方がよさそうです。

さて、クムホヌアの子孫は、地上で邪悪なことばかりしていました。天から見下ろした神は嫌気がさし、地上を燃やし尽くして、全部新しく作り直すことにしました。そうして神は、クムホヌアを作ったのと同じやり方で、もう一度人間を作りました。
神は彼を *ヴェラ・アヒ・ラニ・ヌイ(Wela-ahi-lani-nui) と名づけました。そして、妻として、ラロホヌアを作ったのと同様にして *オウェー(Owe) を作って与えました。

ヴェラ・アヒ・ラニ・ヌイ の名前の意味
 ヴェラ(wela...熱い。)
 アヒ(ahi...火。燃やす。)
 ラニ(lani...天。空。)
 ヌイ(nui...偉大な。)
神が地上を燃やしたことを記念した名前のようです。
オウェーの名前の意味
 オウェー('owe...引き裂く音)
オウェーは、神がヴェラの体の一部を「引き裂いて」、それを元に作ったことを表した名前のようです。

また、邪悪な人類を滅ぼすために神がやったのは洪水だという伝説もあり、それによると、 *ヌウ(Nu'u) という男が大きな船に乗って家族と共に難を逃れ、ハヴァイイ島のマウナ・ケア(ハヴァイイ諸島最高峰。標高四千二百五メートル。)の頂上についたということです。

ヌウの名前の意味
 ヌウ(nu'u...高さ。)

これらの伝説は、旧約聖書のいくつかのモチーフに非常によく似ています。
初めの方は、アダムとエヴァの楽園追放にそっくりです。(聖書では、エヴァをそそのかしたのは蛇ですが、ハヴァイイには古来蛇がいませんでした。)


二つに分かれた森が元に戻ったというところは、出エジプト記を連想させます。(聖書によれば、昔ユダヤ人はエジプトで奴隷にされ、苦役についていましたが、モーセに連れられてエジプトを脱出しました。そのとき、海が二手に分かれて、ユダヤ人のために道を作りましたが、追っ手が来たときに海は元に戻ったので、追っ手は海に飲み込まれたということです。)


邪悪な人類を滅ぼすために地上を燃やしたというのは、神の業火に焼かれたソドムとゴモラの町を思わせます。
また、洪水は、言わずと知れたノアの方舟伝説です。


もし、ハヴァイイ神話がもともとこれほど旧約聖書に似ていたのなら、全く不思議なことです。 ですから、これらの物語は後世の創作で、キリスト教宣教師がハヴァイイに接触してから、聖書の物語をハヴァイイ版に翻案したものだという可能性も考えられます。
しかし、民俗学者のベックウィズ(Beckwith)によれば、この類似性は、ハヴァイイにもともとあった物語が、キリスト教の影響を受けて脚色されたためだろうということです。


【コラム】 今日でも、カヴァは大人気。上記の飲み物のほか、ハヴァイイでは、カヴァの根っこを粉末にしたものが健康食品店や薬局などで売っています。ただ粉を袋詰めしたものもありますが、飲みやすいようにカプセルに入れたものもあります(一カプセル当りの量は商品によっていろいろ。ほかのハーブとブレンドした商品もある。)。
これが、睡眠薬としてよく効く! 早く眠りに入れるうえに、何だか深く眠ったような感じですっきり起きられるのです。
私はときどき、一カプセル二百ミリグラム入りの少な目のものを飲んでいますが、それで十分です。飲んだらすぐに布団に入って、じっとしていると、手足がだらんとしてきて、まもなく眠れます。(飲んでから何か少しでも活動してしまうと効かない)

でも、近藤純夫氏は、著書「ハワイ・ブック」(平凡社)の中で、カヴァを飲んでみたけれど「〜聞いていたような効能は感じられなかった。」と書いていらっしゃるので、効き目には個人差があるのかもしれませんが、寝つきが悪くてお悩みの方は試してみてはいかがでしょうか。念のため、副作用として、飲み過ぎると肌の皮がむけたり、目が充血したりするそうです。 もっと効き目の弱いものでは、ハーブ・ティーとして、カヴァの葉っぱを粉にしたものが売っています(ティー・バッグにしてある物が多い)。独特のにおいがしますが、ハーブ・ティーの中では飲みやすいほう。レモンをたっぷりしぼるとさらに飲みやすくなります。

 ところで、アメリカには、カプセル状のお薬で "No Gelatin" (ゼラチン不使用)とわざわざ書いてあるものがあります(ということは、普通はカプセルを作るのにゼラチンを使うんですね。考えたこともなかった。)。ゼラチンが問題になる理由は、ゼラチン・アレルギーというのは聞いたことがないので、たぶん、アメリカには菜食主義者がけっこういるからでしょう(ゼラチンは動物性。)。日本とのお国柄の違いを感じます。

これはよく効く! カヴァ!

 ハヴァイイでは、神様への供え物に、宗教儀式に、カヴァから作った飲み物が欠かせませんでした。カヴァの飲み物とは、根をよく噛み砕いたものに水を加え、漉したものです。今のハヴァイイには、カヴァ・ドリンクを出す店がいくつかありますが、お店の人が噛み砕いて作ったものを飲むのかしらん?
入ったことがないので分かりません。飲んだこともないのですが、口がひりひりして、ひどくまずいそうです。でも、リラックスさせる作用があって、睡眠薬にもなるので、ハヴァイイでは、庶民もよく飲んでいました。後味が悪いので、たいていは、バナナや砂糖きびなど何か甘いものを口直しに食べたそうです。

カヴァ KAVA
カヴァ KAVA

第一章【3】 四大神による創造神話  完

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